苗(ミャオ)族の宝物 VOL.4
2月26日
昨夜、友達の子供も寝かせず、遅くまで飲んでいた罰です、頭が痛~い。 今日も刺繍マーケットがあるので、朝チョコッと覗いてみました。 突然こちらへ笑いながら向かって来る苗(ミャオ)のおばあさん。 えっ?僕、この人知らない、誰? さっと5元札をこちらに差し出す。 あー、あー、そーだー。 昨日、おばあさんから小さい刺繍を買ったのです。 それで、5元のおつりのところ 『今、細かいお金がないから、帰りに寄ってちょうだいね。』って言われていたのを僕はすっかり忘れて帰ってしまったのだった。 正直なおばあさん。 僕が思うに苗(ミャオ)さん達の殆どがこのおばあさんの様な人達なのだ。
その後、凱里から台江へ、バスで1時間ちょっと、12元(約150円)。 締め切った狭いバスの中で隣の人がタバコを吸い始める。 子供や女性が数人乗っている。『タバコ、止めて下さい』と僕が言うと、なんだよなーという顔しながらもやめてくれる。 今度は後ろの人が吸い始め、僕の後頭部めがけて煙をフーッって。 振り返り、またしても『タバコ、止めて下さい』 『何だ?』 『タバコ、止めて下さい』 『…』 で、やめてくれた。 しばらくすると少し前に座っている二人の男が同時に吸い始める。 あ~あ、外国人の僕がで出来るのはここまでかー。 諦めるしかないな。 と、後ろの方からおじさんが『子供がいるから、 タバコやめろ!』二人の男はそそくさと火を消す。 へー中国も変わったなー。 大進歩だ。 そして、帰りのバスの中でも全く同じ光景に出会ったのでした。 拍手!
バスが台江に到着する。 子供達が迎えに来てくれた。 皆元気そうだ。 でも、榜(BAN)と寿(SOU)がいない。 榜 は家の用事でまだ帰って来ていないが、寿は家の事情でもう台江には戻ってこないらしい。。。 元気で幸せになって欲しいです。
先ずは小さなレストランで皆で昼飯を。 そこに刺繍の老師と可愛い女の子が待っていました。 『この子は。。?』 馮金国が説明する。『この子は老師の娘で、お父さんはリヤカーを引く仕事をしているが、収入が少なく、 今4年生として学校へ通っている彼女も間もなく学校へ行けなくなる。刺繍学校でも、学校に通えるようになるというので、 是非この子をお願いしたいと言っている』そしてもう一人の老師の娘さんは中学校2年生だけれども、情況は全く同じで、 刺繍学校へ入りたいのだと。
皆様のご協力のお陰で、子供達を小学校へ通わせてあげることが出来る様になりました。 そして、寿が里に帰り生徒数も減ってしまったので、二人を新たに受け入れることにしました。 老師もとても喜んでいます。
新入生は小学校4年生の劉祝英と、中学校2年生の宋小英です。 よろしくお願いします!
劉祝英は前からいる英(Ying)と全く同じ名前なので、前からいる英(Ying)は「大英」に昇格(笑)、 新しく入ってきた劉祝英は「小英」と呼ぶ事に。 私は昔、佐藤2号と呼ばれ、いい気がしなかったので、 二人に『ほんとに大小でいいのか?』と聞くと、あっけらかんと『全然気にしない』との事、二人に了解済みです。 さて、そうすると中学生の宋小英は小英ではまずいわけで、かといって特大英にするわけにもいかず、そのまんま「宋小英」に。
前回の『新しい展開』で全員公立の学校へも通うようにと。 しかし榜は18歳、既におねーちゃんなので『学校へは行かない』って。 でも、刺繍の上手な榜には残ってもらいたいので、特例に『榜は学校へは、行かなくてもいい』という事に。 すると大英以外の別の子供達も動揺し始め 『私も学校へは。。。』と。 『えー!?』
そこで、刺繍学校の新しい規定を作りました。 最近、子供達の刺繍技量に明らかに差が出始めており、 もっと皆に頑張ってもらえる様にと、刺繍の技術を重視し年齢もある程度考慮した上で、高級班、中級班、初級班の 3つの班に分けました。刺繍学校は学費はじめ住居費、食費は無料、そして自分達の身の回りの物を買ったりする生活補助費として 今までは80元/月/人を渡しています。 小学校へ通える様になるという事で生活補助費はなくし、作った刺繍を僕らが買う事 で、それを子供達の生活補助費に充ててもらおうとも考えましたが、最終的には高級班-100元、中級班-80元、初級班-50元 としました。
班分けは以下の通り。 高級班:榜、菜 / 中級班:新 / 初級班(中学生):宋小英 ・初級班(小学生):大英、紅春、小英
初級班は学校へ必ず通う、高級班と中級班は学校へ通うか通わないかを選択出来る様にしました。
榜は学校へは通わない。 では、菜、新は? 意見を聞くとやはり『大きいので恥ずかしい』のと『せっかく小学校に入れてもらっても、 授業についていけるか心配。ついていけなければ、申し訳ない』という事らしい。 菜と新は学校へ行った事があるとは言っている。 大英は一度も学校へは行った事がない。 紅春は小学校1年生の時に両親が亡くなり学校へ行けなくなったので、行った事はある。 高級班の菜と中級班の新の二人は学校へ通うか通わないかは自由に決められる様にした。。。 さあ、どうする。 『学校へ行く!』 菜が言う。 その一言、本当に嬉しかった。 『本当!? 新は?』 『私も行く』 よし!!! 『誓う?』 と言って僕が右手を上げると〔中国では誓う時、発誓(ファーシー)と言って、右手を上げる〕 『誓う』 二人とも恥ずかしそうに右手を上げる。 良かった良かった。 宋小英は新、菜より一つ年下だが中学校2年生。 そして新、菜はこれから小学生。 仲良くやってくれるといいのですが。。。
あの日から早、1週間が経った。 子供達はどうしているだろう。。。馮金国と電話で話した。 菜と新は6年生、大英は4年生、紅春は5年生に入ったと。 僕は、驚いた。 皆1年生か2年生に入るのだろうと思っていたのだ。 紅春は何とか授業についていけそうだが、菜と新、大英はかなり難しそうとの事。 それはそうだろう。 普通話(中国語)だって、多少は喋れこそすれ書く事は殆ど出来ないのに。。。 馮金国が『調整する』と言って電話を切った。 とても心配だ。 そんな事で、学校自体を嫌いになってしまっては元も子もない。 もう一度、馮金国に電話し、1年生でも、2年生でも無理のない所から始める様頼んだ。 『分かった。学校側、子供達と相談する』との事。 一筋縄にはいかない事は分っているけど…
最終的には、菜と新は5年生、大英は3年生、紅春は6年生に入りました。 次回、台江に行く時には、皆が元気に学校に通っている姿が見れる事、そして学校の勉強と刺繍を両立出来る日が早く来る事を 心から祈ってます。 苗(ミャオ)族の宝物達、頑張れ!