夢と取り組み

しかし,時代はどんどん変わりつつある。
今、若い苗の女の子達は刺繍や機織から離れ始めている。

かつては農作業の合間に時間さえあれば刺繍や機織りをしていた。刺繍の上手な女性が一番もてた。

しかしそれも過去のことになりつつある。今はわざわざ自分で作らなくてもTシャツやトレーナーを買えばいい。それにその方が楽だし、かっこいい。

僕らはこんな素敵な刺繍が過去のものになってほしくないと思う。
彼らの刺繍は、少しずつだがアメリカやヨーロッパでも注目されている。 若い苗達にこの素晴らしい伝統を守ってもらいたい。
苗の伝統を大切に思うミャオが少しでも 増えて欲しい。

そんな想いから僕らは学校をつくった。

中国でも小中学校は義務教育。義務教育とはいえ、教科書代等は払わなくてはならない。
それができない。学校へ行けない子供達は貴州省だけで何万人といる。北京語も喋れない、
字も書けない子供達に教育の場を提供し、刺繍・織物の習得から苗の歌、苗の文化をも勉強
出来る学校が僕らの学校だ。
苗刺繍を習得し、作った刺繍を僕らが売る事で、その収益を学校と彼女らに還元する。

彼女らは刺繍や機織りを身に付ける事で家庭を助け、自信と独立心を得て欲しい。

そして、僕らの大好きな苗の刺繍を未来へと継承できる。それが可能な程、今、先進国では手工芸が見直されている。もちろん彼らにもその事を実感して欲しい。

学校がある場所は貴州省、刺繍の故郷 台江県。貴州省の省都は貴陽。そこの飛行場から車を乗り継いで約5時間。

苗の友人が藍染工場を経営していて、その近くに教室と宿舎を借りました。沢山の入学希望者がありましたが、最初の半年は12歳から18歳までの11人の子供達でスタート。 2001年3月末には準備完了。ところが生徒が来ない!「無料で学べる」という事を信じてもらえなかった。
やっと全員が集まったのが4月30日。無事開校式に辿り着きました。


午前中は4時限の授業で午後は自習。子供達の学ぶ姿勢は真剣そのもの。午後の自習時間も自主的に刺繍に向かっています。


先生は近所の苗の人達。刺繍、機織、藍染、製布、北京語等それぞれ得意な分野を受け持ってもらいます。


週に1時間は子供達の希望で、日本語の授業もあります。これは藍染工場の友人が自分で日本語を勉強しながら教えるのでどうなることやら..。

僕らの試みは始まったばかりです。この学校を存続させるために経営基盤の強化が必要であることは充分に承知しています。
少しでも多くの子供達がこの学校で学び、その子供達が苗刺繍の美しさを世界に伝えていける様に、やらなくてはならないことが山程あります。(2001年5月)

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